チョ・ナムジュ作家の「82年生まれ、キム・ジヨン」。
ありふれた普通の韓国人女性が、男性優位の社会で就職、結婚、出産育児を通して直面したさまざまな出来事をつづっています。
ワンオペ育児や産後うつ、育児ストレスなどについて考えさせられました。
「82年生まれ、キム・ジヨン」は映画化されて韓国で大ヒット。
国際結婚で韓国に暮らす私が「82年生まれ、キム・ジヨン」の感想を書きたいと思います。
小説「82年生まれ、キム・ジヨン」購入のきっかけ
半年ほど程前、子供が寝静まった後、テレビで「82年生まれキム・チヨン」の映画版をみました。
人気俳優のコン・ユさんやチョン・ユミさん主演の作品だったから。
でも、映画を見始めたら目が離せなくなり……原作が読みたくなって購入しました。
映画の多くは、フィクションですよね??
「82年生まれ、キム・ジヨン」はとてもリアルに描写されていました。
原作が130万部突破の人気小説ということは、後から知りました。
※「82年生まれ、キム・ジヨン」の紹介動画はこちら↓
「82年生まれ、キム・ジヨン」の詳細
韓国内でフェミニズム旋風を引き起こした本作は、1982年生まれの平凡な主婦が主人公のお話です。
反響が多く、翻訳版がでると日本でも話題になりました。
アマゾン(日本)で「フェミニズム 小説」と入力すると、ベストセラーで上位表示されています。
原作者チョ・ナムジュさんについて
「82年生まれ、キム・ジヨン」の作者チョ・ナムジュさんは、1978年ソウル生まれ。
放送作家として長いキャリアをつみましたが、出産育児を期に仕事をやめ、育児に専念したそうです。
日本語版の翻訳者の斎藤真理子さんによると、
著者のチョ・ナムジュさんは放送作家として社会派番組などを10年間担当してきた女性ですが、出産・子育てを機に仕事を辞め、ワンオペ育児のつらい時期を小説を書くことで乗り越えたそうです。ー 引用元:好書好日
「82年生まれ、キム・ジヨン」がリアルな理由は、作者自身の経験が色濃くあらわれており、子育てママたちが共感できる話が満載だからだと思います。
「82年生まれ、キム・ジヨン」のストーリー
「82年生まれ、キム・ジヨン」は、出産育児ストレスで鬱になった患者の話。
医者がカルテを記録する形式で淡々と展開します。
3歳年上の夫とソウル郊外に暮らすキム・ジヨン(33歳)は、1歳の娘を子育て中の専業主婦です。
育児ストレスからあまり眠れず気分も優れない状態。
ときどき他人になって話す「憑依」症状が出るため、心配した夫が精神科に相談しにいきます。
本作のもくじは、ジヨンが生まれた年から年代順。
・1982~1994年
・1995~2000年
・2001~2011年
・2012~2015年
・2016年
冒頭「2015年秋」はチュソク(秋夕)で夫の実家に帰省した時の事件。
その後、ジヨンがそれまでどんな人生を歩んできたのか彼女の半生をつづっていきます。
「82年生まれ、キム・ジヨン」の感想
「82年生まれ、キム・ジヨン」の話は、個人的には日本の「昭和」時代を感じさせるものでした。
「82年生まれ、キム・ジヨン」がリアルな理由
「82年生まれキム・ジヨン」がフェミニズム小説と言われる理由は、いたるところに男性優位社会が描かれているため。
主人公が直接経験したことだけでもこれだけあります。
・主人公が男子学生に後をつけられて怖い経験をしても、父親に責められる
・女性という理由で就職がなかなか決まらない
・祖母たちはチヨンの弟をひいきする(男の子を大事にする文化)
・嫁は台所で労働する
また、チュソク(秋夕)の義理家族とのやりとりは、現実にどこにでもみられるシーンだと思います。
チュソクは、家族が集まって法事をしたり、お墓参りをしたりする大イベント。
そのため、食事の準備はかなり重労働です。
女は食事を作り、男は居間で横になって団らんするという風景がよく見られます。
結婚した女性は「夫の故郷で従事した後、自分の実家に(休みに)いく」という流れ。
もちろん、そうじゃない家庭もあります。最近は負担をへらそうという動きも多いです。
食事や行事を簡略化したり、あえて家族で旅行に行ったり、かわってきています。
でも、主人公ジヨンの義理家族は昔ながらの方式。
大量の食事の準備は義母が決めますが、1日中作っているため嫁が手伝わなければ終わりません。
そのため、ジヨンはソウル~釜山間の長距離移動で疲れていても休めません。
このようなエピソードは、既婚の韓国人女性ならだいたい心当たりがあり主人公に共感しやすいと思います。
「82年生まれ、キム・ジヨン」にみえるワンオペ育児とママの孤立化
主人公の子育て環境は、孤立しやすい環境だと思います。
出産を理由にキャリアを諦めて退職、家で子供と二人きりの日々。
思い通りにならない環境の中夫も実母も仕事で忙しく、なかなか手伝ってもらえません。
これは、ありがちなシチュエーションですよね。
自分もそうだったと思った人は、私だけじゃないのではないでしょうか。
寝不足で疲れきって思考力を失い、廃人状態で毎日の家事育児をマシンのように行うだけ。
感情が消えうせるような感覚です。
ここまでくると、無気力、眠れないなどの症状がでてくるのも仕方がないかと。
産後はホルモンバランスが不安定になるうえに、授乳などで寝不足が続いて心が不安定になる人が結構います。
近くに友達や頼れる人がいれば違うのですが……。
真面目な人ほど子育てを1人で抱えこんでしまうのではないでしょうか。
「82年生まれ、キム・ジヨン」から学べる事:夫婦の歩みよりの大切さ
結局のところ、夫婦がどのように対応していくかで状況は変わってきます。
さいわい主人公の夫は、妻を心配して病院に相談に行くほどに優しい男性です。
でも働きざかりのパパ世代は経済活動に忙しく、孤独な妻も家族もみる余裕がないことが多いもの。
ジヨンが夫に求めていることと、夫がジヨンにしてあげようとすることが合わないのは仕方ないと思います。
だから、ジヨンは夫の些細な言葉にも敏感です。
女性の生きにくさを社会のせいにすればそれまでですが、大切なのはパートナーと協力して解決策をみつけること。
人は自分に余裕がなくなると周りが見えなくなりがちですが、夫婦関係ではお互いを思いやる気持ちが大事ですよね。
ジヨンの話を読みながら、困難な状況にいても前向きに解決策を探すしかないと思いました。
まとめ:たくさんの人に読んでほしい作品
「82年生まれ、キム・ジヨン」は、子育て中の人だけでなく、幅広い世代の人に読んでほしいおすすめの作品です。
主人公キム・ジヨンさんは82年生まれなので、もしかしたら、もっと若い世代で違うかもしれません。
時代はうつり変わるもの。
日本でも昭和と平成、令和で社会の風潮が違いますよね。
それでも、一読する価値のある作品だと思います。
また、本を読む時間がない人や本を読んだ方には、映画もおすすめです。
キャスティングが素晴らしくてハマること間違いなし。
ハンカチやティッシュ持参でどうぞ。